よろしく哀愁 香取慎吾 少年愛小説


戸惑う間もなく、渇いた唇を割り開いて熱くぬれたものがすべりこんでくる。咲輝は振り向いて、ベッドの上にのっている旅行鞄を指さす。

「そりゃそうだよな。こんなことになるなんて、予想しないもんなあ」。炎に落とした粉を見た瞬間、ハーコンは口中で罵った。

一葉が声を噛み殺していると知っていて、わざと返事を求めているとしか思えない。

じわり、と痺(しび)れが走る。「…………っ」。「誰も邪魔なんかしてないって。あなたは映画見てていーよ。俺は俺で色々すっから」。「でも……」。「うっ、ううっ!」。「しなくていい!」。

「適度なやんちゃっぷりといい、抱きごこちといい、言うことなし」。「それは皮肉か?」。こいつと一緒にひとつのことに立ち向かい、乗り越えてゆくのが好きだ。「楊虎?」俊也の足に自分の足を絡ませ、着ている浴衣の襟を引くと、ゴロンと転がり体制が入れ替わった。

一歩手前で中断された快感に、嶋田、と上げた抗議の声はかすれてふるえた。「キスじゃないのか」。つまり、短剣で胸を突く前に、ジュリエットがロミオに別れのキスをするシーンを、これから俺は演じなくてはならない。「好きなんだよ。俺が悪かった。謝るから帰ってこい」。どういう意味か分からなくて、眉を寄せ、樋口を見上げた。「口を開けろ。歯を立てたら……そこにあるムチでも使おうか」。切れ長の漆黒の双瞳に通った鼻筋、酷薄な印象を与える薄い唇には、微かな笑みが浮かんでいる。


ボーイズラブ小説作品紹介


「二週間あれば、本気で誰かに惚れることだって……あるんだ」。元気と明るさだけが取り柄の瀬戸亮は、山道で事故に遭った所を料亭民宿の主・柿野坂皓市に拾われる。無愛想で口煩い皓市に反発する亮だったが、時折見せる彼の優しさにやがて惹かれていった。しかも、成り行きで店を手伝うことになり、ついには恋心を自覚してしまう。だが、皓市は相変わらずつれなくて……。

タイトル:捨てたもんじゃねぇ
著 者 名:綺月陣
レーベル:講談社X文庫、 ホワイトハート
発 行 元:フロンティアワークス

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