True Heart 曾我泰久 BL小説


逆らってはいけないと聞いていたのに、華南はつい口答えをしてしまった。「フレンチなら」。ジェレミーは両手を僕の顎に当て、自分のほうを向かせた。廣岡の胸元に揺れる、顔のだらーんとしたパンダ柄のネクタイに、視線をさまよわせた。思わず表情を歪めたハーコンを、ディロンが揶揄うように見つめた。それに、いくら男同士とはいえ、この男は赤の他人の麻尋の前でどうして裸になれるのかと、羞恥心の足りない相手を胸の内でなじった。怒らないほうがどうかしている。

規則正しい彼の寝息の中で、自分だけが彼の未来から取り残される不安に脅(おび)え、より一層彼に擦り寄った。教えたらどんな反応を見せてくれるだろう。出会いからレオンに対して甘えすぎだということは十分自覚していたし、ミサキは子供の頃から誰にでも無防備に甘えるようなタイプでもなかった。仕立のいいベージュのジャケットは、しどけなく肩に羽織っただけだった。片腕の袖を捲り上げて、わざわざ鳥肌を見せる泉水に、彼の不愉快度数の高さを垣間見た気がした如月だった。嬉しいという感情より、戸惑いが勝っている。

宮地がふっと目を細める。痛さは思ったほどではなかったが、打たれたところが熱いし、何より猛烈に恥ずかしい。桐谷の手の中のものがどうなっているのか、成は知っているのだろうか。結婚の話を聞いたとき、彼の恋が実ったことを知った。

(すご、い……なに、これ?)キスといえば、母親と交わしていた挨拶代わりの穏やかに甘いそれしか知らなかった。

「何言うてんねん。ジジイになろうが仙人になろうが、俺は一生お前とラブラブで暮らすで!」。あまりにも不測の事態に、鉄壁の笑顔も崩壊していた。身体を密着させ、大日向が耳元でささやいた。唇が離れた一瞬のスキを縫って、俺は言った。彼が自分に興味がないならそれは仕方がないだろう。青山の好きな微笑が。「もう、か?」。

逃げ場を失ったか弱い獣の、最後の抵抗。声が震えていると思うのは気のせいだろうか。


ボーイズラブ小説作品紹介


経理室の長谷崎冬夜は、一流スタイリストを目指す宮野宏隆に片想い中。 そんなある日、母の策略により宏隆と一緒に住む事になってしまい、うろたえながらも宏隆に尽くす決意をする。 一方、宏隆は企画のためとはいえ、超ダサい冬夜との同居にうんざりしていたが、冬夜の健気な様子は大変微笑ましく、その上、素顔が信じられないほど綺麗で、一緒に暮らすうちにどんどん惹かれてしまい……。

タイトル:見ているだけじゃ我慢できない
著 者 名:高月まつり
レーベル:七日間シリーズ
発 行 元:フロンティアワークス

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